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「………」
「今日は体調が良いみたいですね」
「……ん」
お昼過ぎの、保健室。
数日続いたうだるような暑さが嘘のように、今日は涼しい風が入り込んでくる。
「気持ちよさそうに。猫みたいですね」
「ねこ、って」
額にかかった前髪を、風がくすぐっていった。
ソファに座る僕を、満月先生はデスクで仕事をしながら笑って見ている。
ゆるやかな、やわらかな、時間。
こんな毎日が、続けばいいのに。
(このまま、ずっと)
(時が止まれば、いい)
けれど長くは続かないのが、生きる難しさで。
決まって、夢を見る。
狭い世界の夢。
逃げても、追われ。
捕まえられ、虐げられ。
夢だとわかっていても。
その光景は過去のリアル。
もう、やめてと。
もう、嫌だと。
これだけ苦しめられれば。
許してくれるでしょうと。
でも―――黒い影は僕を逃がさない。
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