1
 

「………」
「今日は体調が良いみたいですね」
「……ん」



お昼過ぎの、保健室。
数日続いたうだるような暑さが嘘のように、今日は涼しい風が入り込んでくる。



「気持ちよさそうに。猫みたいですね」
「ねこ、って」



額にかかった前髪を、風がくすぐっていった。
ソファに座る僕を、満月先生はデスクで仕事をしながら笑って見ている。

ゆるやかな、やわらかな、時間。
こんな毎日が、続けばいいのに。



(このまま、ずっと)
(時が止まれば、いい)



けれど長くは続かないのが、生きる難しさで。





決まって、夢を見る。
狭い世界の夢。

逃げても、追われ。
捕まえられ、虐げられ。

夢だとわかっていても。
その光景は過去のリアル。

もう、やめてと。
もう、嫌だと。

これだけ苦しめられれば。
許してくれるでしょうと。

でも―――黒い影は僕を逃がさない。



前へ top 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -