6
先生に、嫌われた。
苦しくなって、本当のことを言った。
先生は、傷付いた顔をした。
嫌われたんだなぁ、と思った。
「ふっぅ、えっ、」
理由なんて、言えなかった。
自惚れかもしれないけど、理由を言えば先生は、きっと乾君を問い詰める。
そうしたら、僕が言ってしまったこともバレる。
先生は学校に、いられなくなってしまう。
乾君のお父さんは教育委員の偉い人なんだって、聞いたこともある。
本当に辞めさせられるなんてことが、出来ないわけじゃない。
「っく、う……」
嫌われた。
でも、先生の幸せの方が、大事だった。
ソファで踞って泣いていたら、こん、と部屋をノックされた。
震える声で返事をすると、無言のまま、扉が開いた。
あれ、鍵かけてなかった、
「っ」
「雨宮、」
乾君が、いた。
鍵開けっ放し、危ないぞ、と言いながら、ぱたんとドアを閉めた。
何しに、来たんだろう。
身体を固くしていたら、乾君が近付いてきた。
「いぬ、い、く……?」
「………」
頭んなか、ぐちゃぐちゃ。
ぎゅうって、抱き締められていた。
優しい腕は、先生のいつものそれに、ひどく似ていた。
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