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side.譲



その日、俺たちは別々に眠った。

寝室から、雨宮が泣いている声が聞こえた。
でも、抱き締めてやることは、どうしても出来なかった。

ほとんど会話もないまま、朝を迎えた。
眠れなかったんだろう、赤い目のままの雨宮を車に乗せて、寮まで送りに行った。



「ぼ、ぼく」



寮の近くに車を止めて、別れの場。
初めて雨宮が、口を開いた。



「僕、先生のためならって、」
「……?」
「ばか、だからっ……こうするしか、なかった」



何の話を、している?



「さよなら、っ……」



ぽつり、雨宮が呟いて、車から降りて行った。

訳がわからなかった。
雨宮から浮気を宣言されたようなもんだった。
なのに、雨宮が傷付いたような顔をして。



「くそ、」



抱き締めてやれば、良かったのか。
けれど、ほいほい許すほど、俺の心は広くない。
好きだからこそ、許せなくて。
好きだからこそ、悲しい。



(なん、だったんだろうな、)



雨宮にとって、俺は。



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