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いやだ。
いやだ、いやだ。

狭いエレベーターの中では、誰も助けてくれない。



「っん、ん……っ!」



ぴちゃ、と水音がして、耳を塞ぎたくなった。



「んふ、んっ……は、」
「おやすみ」



ようやく唇が離れて、息が出来るようになる。
乾君がにやりと笑って、エレベーターから降りた。
一人になって、ずるずるとその場に座り込んだ。

学校でも、寮でも、同じだった。
乾君は僕を見つけては、嫌がることをしていく。
僕が、誰にも助けを呼べないとこを、わかってて。



「っ………」



部屋に戻って、服を着たままシャワーを浴びた。
服がぺたりと肌に張りついて気持ち悪い。

乾君が触れた唇を、切れるくらい擦った。
握られた腕を、添えられた頬を、ただひたすら擦った。



「ひ、う……っえ、」



誰にも言えなかった。
先生にさえも。

これからどうなるかなんて、わからなかった。
卒業するまで、ずっと続くのかもしれない。
ずっと、先生に隠したまま。

先生は僕が卒業するまで、一緒にいてくれないかもしれない。
バレて、汚いって言われるかもしれない。
本意じゃなくても、こいびとじゃない人と、こんなことしてるんだから。



「も、やだ……」



嫌な考えがぐるぐる回った。
そんなことしか考えられなかった。

シャワーの湯と、涙と。
気付いたら、血が流れていた。
腕から溢れた血が、透明な液体と混ざって、排水溝に吸い込まれた。



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