3
side.譲
「ただいまー……」
なるべく早く買い物を切り上げて、家に戻った。
雨宮の心の調子が悪くなるのはそう珍しくなく、薬を飲んでしばらく休めば、回復するのが常だった。
寝ているのかと思い込んで、食材を片付けた後。
「………」
リビングの床に散らばる、空になった薬包紙。
その量は尋常じゃない。
「あま、みっ……」
寝室に駆け込んで、動けなくなった。
部屋の隅で震えている、小さな身体。
「あ……あ……」
涙を流し続ける雨宮の目は、虚ろで何も映さない。
目の前にしゃがみこむと、びくっと反応した。
「や、やっ……」
「……雨宮」
「っ……や、こわい、」
目は、俺を映さない。
そっと手を伸ばすと、指先に痛み。
「っ………」
怯えた雨宮が、俺の人差し指を、噛んだ。
「う、うー…っ」
威嚇する、こいぬのよう。
指を噛まれたまま、もう片方の腕で、頭を抱えた。
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