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side.譲



「ただいまー……」



なるべく早く買い物を切り上げて、家に戻った。
雨宮の心の調子が悪くなるのはそう珍しくなく、薬を飲んでしばらく休めば、回復するのが常だった。

寝ているのかと思い込んで、食材を片付けた後。



「………」



リビングの床に散らばる、空になった薬包紙。
その量は尋常じゃない。



「あま、みっ……」



寝室に駆け込んで、動けなくなった。
部屋の隅で震えている、小さな身体。



「あ……あ……」



涙を流し続ける雨宮の目は、虚ろで何も映さない。
目の前にしゃがみこむと、びくっと反応した。



「や、やっ……」
「……雨宮」
「っ……や、こわい、」



目は、俺を映さない。
そっと手を伸ばすと、指先に痛み。



「っ………」



怯えた雨宮が、俺の人差し指を、噛んだ。



「う、うー…っ」



威嚇する、こいぬのよう。
指を噛まれたまま、もう片方の腕で、頭を抱えた。



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