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浮上する、意識の中。
「雨宮、」
「……ん……」
「おはよ」
揺り起こされて、目を開けた先には先生の柔らかい笑顔があった。
先生の家に泊まった、次の日の朝はいつもこう。
先生はちゅ、と額にキスをして、隣に横たわる僕を一度抱き締めた。
「……顔色、悪いな」
「………」
先生は僕の髪を撫でて、心配そうに眉をひそめた。
「薬、飲むか」
「………は、い……」
「ちょっと待ってな」
ベッドから出た先生が持ってきたのは、コップ1杯の水と、薬。
……精神安定剤。
あの日から、僕はこれがないと駄目になった。
先生もそれを、知っている。
「……飲めるか」
「………」
返事をすることも億劫で、ただこくこくと頷いた。
先生が背中に手を回して、上半身を起こしてくれる。
こく、と薬を飲む間、先生はずっと頭を撫でてくれた。
「嫌な夢でも、見たか」
「覚えて、ない、です」
「………」
「……ただ、こわい、」
前触れもなくやってくる不安は、僕を、落とす。
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