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side.譲
「夜は冷えてきたなー」
「………」
「寒くねぇ?」
「だいじょうぶ、です……」
鍵の見回り。
暗いのを良いことに、手を繋いで廊下を歩いた。
雨宮の手が、ひどく冷たい。
「すっかり冬服だな」
「………」
「……雨宮?」
「はっ、はいっ……」
「ぼーっとしてる」
「………すみ、ません」
歯車が合わないような。
明らかに雨宮の表情は暗くて。
「俺、今日、宿直なんだ」
「はい………」
「夜、お前の部屋行ってい?」
「!?」
「冗談だよ」
少しだけ、雨宮の表情が柔らかくなる。
けれどいつもより暗いのは明らかで。
何かあったんだろうか。
理解して、あげたいのに。
「……よし、帰るか」
「………」
最後のドアをチェックした。
強く手を握り返すけれど、雨宮は反応してくれない。
「やっ……」
唇を寄せると、顔を背けられた。
「っ……ごめ、なさ……」
「……帰ろ」
泣き出しそうな顔になったから、頭を優しく撫でてやった。
何もなければいいが。
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