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「……お前もジャージ組か」



入って早々、先生がぽつりと呟いた。
準備室は先生の部屋、みたいな感じで。
資料室とも言えなくはないそこは、棚に本がぎっしりつまっている。
他の国語の先生の机と、向かい合ったソファ。
窓辺には小さなシンクもあって、先生はいつもそこでコーヒーを作ってる。



「傘持ってなかったんです。……ここ置いときますね」
「ん、さんきゅ」



課題を机に置くと同時に、マグカップを手渡された。
作っておいてくれたのか、甘い匂いのするココア。
普通だったらもう帰るべきなのに、先生はいつもこうして、僕を引き止めてくれる。



「ぶかぶかだな」



ソファに隣り合って座ると、先生がジャージの襟刳りを引っ張った。



「肌見えすぎ。いつもこんなんで体育してるのか」
「なに、言ってっ……これ、僕のじゃないです、」



如月が館林に言ったのと、同じ台詞。
見えすぎって……気にしすぎじゃないのかな。



「体操服忘れて……宮沢くんが、貸してくれました」
「………」
「……先生?」



どうしたんだろう、と思った瞬間に視界がくるりと反転した。



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