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side.譲



電話の向こうで、雨宮が少し笑ったのがわかった。



「俺が雨宮の左側にいて……雨宮はこっちむいてる」
『……はい、』
「俺は雨宮の腰に腕回してて、」
『少し……くすぐったい、』



ちょっとだけ、雨宮の声が甘えはじめた。
あぁ、会いたいな。



『……ぎゅって、』
「俺は、雨宮を抱き締める。……いい匂い」
『ふふっ……変、』
「俺はいっつもそうおもってんの」
『っ………』



きっと今、真っ赤なんだろうな。
見えなくてもわかる。
傍にいてやれなくても、伝わるものはある。



「俺は雨宮の頭を撫でる。……髪のいい匂いを嗅ぎながら」
『……そんな、ことっ……』
「雨宮は?」
『僕、は……先生の、背中に……手を回してる』
「だんだん、眠くなる」
『……でも、眠れない』
「俺は、寝るまで話をする」



雨宮は、今一人でベッドに寝てる。
この電話が切れれば、しんとした部屋の中。

俺は、雨宮が眠るまで。
しあわせな夢が見られるまで、言葉を紡ぐ。

ぎゅっと抱き締めて。
いい匂いを感じて。
華奢な背中を撫でて。
暗闇の中、ぽつぽつと会話をする。



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