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憂いはもう、どこにもないと思っていた。
(……なんで、)
まだこんなこと続けてるんだろう。
床に滴る赤を見つめた。
先生が傍にいてくれるようになって、僕はもうこんなことはしないと心に決めたのに。
なのに、長年の行為は、もう癖になっていて。
少しでも不安を感じると、無意識に自分を傷付けてしまう。
(……ばか、)
自分を罵倒する。
もしかしたらずっと、僕はこうやって生きていくのかと思った。
人に見せられない傷。
隠し続けて、すごす日々。
この学校は生徒数が多くて、色んな人がいる。
紫外線に弱くて夏でも長袖の人も、少数派だけれどそんなに珍しくない。
だから僕は、長袖で過ごすことができる。
(……そう、甘くはないんだろうな)
大学を出て、社会を出たら。
今よりも困難はたくさんあるはず。
僕は、耐えられるんだろうか。
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