6
side.譲
「……雨宮?」
後ろから抱き締めていたら、俺の腕に手を添えて、雨宮が肩を震わせるのがわかった。
「泣いてる……?」
「う、ごめ、なさっ……」
「なに、どうした」
「一緒、花火……見れると、思って、なかっ……」
嬉しい、とポツリと呟く声が聞こえた。
花火なんて、見ようと思えば見れる。
出掛けたかったら車走らせてでも、出掛けることだってできる。
雨宮が望むなら、出来ることは、してあげたいと思う。
花火を一緒に、しかも学校とかいう色気のない場所で、見れただけなのに。
「う、っ……ひっく、」
泣くほど、嬉しいなんて。
「泣くな」
「うー……」
「かわいい顔して」
身体を横に向かせる。
閉じた瞼に、キスを一つ。
雨宮はくすぐったそうに震えて、少しだけ、目が開いた。
「お祭りまで、一緒行けなくて、ごめんな」
「っ……」
小さく、首が横に振られた。
気、使ってるんだろう。
雨宮を向かい合わせにして、俺の膝の上に乗せた。
きゅっと首に腕が巻き付けられた。
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