5
「雨宮、こっち」
「?」
「こっち座って」
横に並んで座っていたら、突然の申し出。
……先生の、足の間。
「っ、え、」
「早く」
「わ、わっ」
無理矢理、座らされた。
後ろから抱き締められて、心臓が爆発しそうになる。
「背中、預けていいぞ」
「っ……緊張、するから、無理……」
「……可愛いこと言うなぁ」
ぐいっと先生の腕で身体を倒されて、僕の背中と先生の身体がくっついた。
咄嗟に離れようとするけれど、先生が頭の上に顎を載せてきて、動けなくなった。
「ほんとだ、心臓やばいな」
「う、……」
「俺もやばいけど」
背中に感じる速い鼓動は、僕のものか先生のものかは、わからない。
どん、どん。
花火が上がって、夜空にキラキラ舞う。
「結構ここ穴場かもな」
「そう、ですね……綺麗」
「祭りとか好き?」
「割と……あ、でも、人混みは苦手かも……」
「わかる、俺も苦手。前進めないと苛々する」
後ろで先生が、笑った。
花火、一緒に見られないと思ってたから、うれしくなる。
先生の家とは違う、またゆっくりした時間。
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