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side.譲
くんっと裾がひかれ、驚いてもう一度雨宮を見た。
涙をいっぱい目に溜めて、俯いている。
「あまみ、」
「ちが、違う、僕っ……せんせ、と」
「ん、なに?」
落ち着かせるようにそっと抱き締めて、背中を撫でた。
きゅっと俺の背中に手が回されて、服を掴まれた。
まるで、行かないで、というように。
「お祭りっ……行きたくて、っ」
「え」
「せんせ、忙しっ……かなって、めいわく、」
……祭りって、何だ?
そう思った瞬間に、どんっと大きな音が鳴った。
3階のこの教室からは、花火がよく見えた。
……今日、花火大会だったのか。
「……ごめん、俺今日が祭りって、知らなかった」
「っ……」
「顔あげて、一緒見よ。ここなら誰にも邪魔されないし」
からかうように言って、軽く雨宮にキスをした。
かぁ、と顔が赤くなったのをいいことに、頬に落ちる涙を拭ってやった。
「ほら、窓側行くぞ」
「はい……」
机を二つくっつけて、それに座った。
「わ、すごい、見える……」
「な」
ちょっとだけ雨宮が笑うから、胸がぎゅっとなった。
一緒にお祭り、行きたかったんだな。
でも、気を使って。
なかなか我が儘が言えない、でも俺を思ってくれる、可愛いこいびと。
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