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「……もしもし、」
『今時間あるか』
「っ……!」
ディスプレイを確認せずに電話を取ったことを今更後悔した。
咄嗟に切ろうとすると、電話の向こうで苦しそうに咳き込む声が聞こえた。
『暇なら、表出てろ』
「え、なんっ」
ぶつり、と切られる。
かなり一方的な電話だ。
けれど、苦しそうな息やかすかに震える声は、今までに聞いたこともないもので。
「………どう、しよ」
気まずくないわけはない。
何の話をする気か、考えるだけで嫌になる。
お前は律の代わりだったと、はっきり言われてしまうかもしれない。
けど、気付いたら僕は着替え始めていた。
先生のいつもと違う様子が不安を駆り立てて、表に飛び出した。
風邪引いてるのか、具合が悪いのか、
寮から出ると先生の車はもう着ていた。
もしかしたら最初から、ここにいたのかもしれない。
車から降りてきた先生と、一瞬だけ目があった。
「ちょ、っ……」
無言のまま腕をひかれて、車に乗せられた。
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