5
side.譲
「っ……雨宮!」
必死に、走り回った。
近くの公園に、その姿はあった。
ベンチに座り込んでいる、その姿は、
「っ……や、っ」
「いなくなったかと思っ、」
思わず抱き締めて、自分の身体が震えているのがわかった。
怖かった。
律みたいに、突然、いなくなってしまうかと思った。
思い知らされる。
ちっとも、立ち直っちゃいない。
「せんせっ……離してっ!」
「……その腕、っ」
「や、やだっ、触んないでっ……」
雨宮が俺を拒否する。
その腕に包帯はなく、真新しい傷がいくつか。
古い傷も開いてしまっていた。
「帰ろう、な、」
「やっ……やだ、っ」
ぱしん、と手を払われて、涙をいっぱい浮かべた目で睨み付けられた。
ツキン、と胸が痛んだ。
雨宮を、傷付けた。
傷だらけの雨宮を、俺が。
「いやあっ!やっ……」
半ば強引に、雨宮を肩に担ぎあげた。
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