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side.譲
「雨宮……?」
帰ってくると、玄関の鍵が開いていた。
靴がなくなっていて買い物に行ったのかと思いきや、鞄はそこに残されている。
「っ……!」
ぽつりと残された本。
床に落ちた写真。
チェーンの付いた指輪。
気付かれた。
「雨宮っ……!」
外に飛び出した。
こんな形で、知られたくはなかった。
隠すつもりもなかった。
雨宮の傷が癒えたら少しずつ、話すつもりだった。
雨宮は自分のせいで、兄が死んだと思っている。
俺とその兄が、付き合っていたと知ったなら。
雨宮は自分を責めてしまうかもしれない。
自分を、完全に否定してしまうかもしれない。
(くそっ……)
自分に罰をつけて。
深い傷を、何度も重ねて。
自分を否定して、否定して。
もしかしたら、雨宮は、
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