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「……あ、俺郵便局行かなきゃだわ」
午前中に閉まるし行って来るな、と先生は泣き止んだ僕の頭を撫でた。
ばたんとドアが閉まって、先生の家に一人。
……僕、泣いてばっかだ。
来たときもそうだし、今だって。
先生も迷惑かもしれない。
お兄ちゃんを思うとわけがわからなくなって、ごめんなさいがいっぱいになって、泣いてしまうけど。
なるべく、泣かないようにしなきゃな……。
(……本、)
本棚に、ぎっしり。
仮にも国語教師だもんな。
暇で適当に眺めていたら、一冊目に留まった。
(……お兄ちゃん、の)
お兄ちゃんの遺品の中に、見たことがある本。
題名を見ると、先生が前に好きだって言ってたやつで。
(同じの読んでたんだ……そんな人気なのかな)
パラパラと、めくった。
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