1
 

side.譲



抱き締めて背中を撫でていると、次第に雨宮は泣き止んだ。



「……すっかり遅くなったな。帰るか」
「っ……」



冷静になって抱き締められている状態に気付いたのか、泣き顔を見られたのにはっとしたのか、雨宮は顔を赤くさせたまま無言で俯いた。
それがなんだか、かわいくて。



「泊まってくか?」
「え……えっ?」



さらにわたわた慌てだす始末。
思わず苦笑してしまった。



「冗談。車出すから」
「えっ……」
「え?」



次はこっちが慌てる番だった。
腰をあげた俺の服の裾を、雨宮がしっかり握っていた。



「あ、泊まるか?」
「あっ……いえ、帰りますっ」



言いながら、手は離してくれない。
……かわいい。



「ほんとはどっちがいい?」
「え」
「我儘聞いてやる」



ぱっと顔をあげて、雨宮は少しだけ嬉しそうな顔をした。



「えと、じゃ、……泊まり、たい……」
「ん」



頭をくしゃりと撫でると、雨宮はくすぐったそうに笑った。



前へ top 次へ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -