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side.譲



すべて、知っていた。
雨宮の過去も、
雨宮の兄―――雨宮律のことも。



「お前のせいじゃない」



雨宮律―――俺の、



「お前の、せいじゃないよ」



俺の―――恋人だった。

小学生だった雨宮は覚えていないだろう。
雨宮の兄、律と俺は、同じ高校だった。
お互い好きになって、付き合い始めた。

けれど律は、突然死んだ。
それから俺は、雨宮家とは疎遠となった。
誰かを愛するのが、怖くなった。
いつかいなくなるなら、どうせ―――。



高校教師になって、名簿で見知った名前をみた。
雨宮、陸。
なんて皮肉な運命だと思った。

けれど律と似た雨宮に、律と違う雨宮に、俺は惹かれた。
雨宮にも事件のトラウマ―――腕の傷が残っているのを知った。



傍にいてやりたいと思った。
だから、俺は、



「一人で、泣いたりするな」
「……っ」
「俺が、受けとめてやるから」



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