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「僕、こんなことっ……」
「………」
「本当は、気持ち悪っ、て……!」
「……馬鹿なこと言うな」
先生の胸に抱き込まれ、背中を撫でられた。
「そりゃ、正しいこととは思わないけど」
「………」
「間違っちゃ、いないだろ」
優しい、声。
涙が止まらなくなって、僕は必死に先生にしがみついた。
「せんせ、僕、ねっ……」
「ん、」
「僕っ……ひと、ころし、っ」
「………」
「お兄ちゃんが、僕のせいで……死んっ……」
ねぇ、先生。
僕は人殺しなんだ。
「だから、僕っ……」
「………」
先生は黙ったまま、震える僕を、抱き締めてくれた。
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