1
 

「雨宮、傷、見せて」



放課後の職員室。
僕と先生の2人きり。
椅子に座る先生の前に、僕は立ち尽くす。

僕にとってこの傷は、痛みと恐怖と恥。
見せることなんて、できなかった。



「雨宮、」
「………」



先生には、逆らえない。
左の袖を捲って腕を露出させる。
ぞろりと現れる傷に、先生は、



「……きれい」
「っ……」



そう言って、優しくなぞる。



「や、っ……いや、」
「なんで?」



僕は、泣いてしまう。
構わず先生は僕の汚い傷に唇を寄せる。
あらがおうとして肩を押すけれど、先生は離れない。



「ふぅっ、……っく、」
「……泣くな」



先生が頬を撫でて、指で涙を拭ってくれる。

優しいそれに、僕は、目を閉じる。



前へ top 次へ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -