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「雨宮、傷、見せて」
放課後の職員室。
僕と先生の2人きり。
椅子に座る先生の前に、僕は立ち尽くす。
僕にとってこの傷は、痛みと恐怖と恥。
見せることなんて、できなかった。
「雨宮、」
「………」
先生には、逆らえない。
左の袖を捲って腕を露出させる。
ぞろりと現れる傷に、先生は、
「……きれい」
「っ……」
そう言って、優しくなぞる。
「や、っ……いや、」
「なんで?」
僕は、泣いてしまう。
構わず先生は僕の汚い傷に唇を寄せる。
あらがおうとして肩を押すけれど、先生は離れない。
「ふぅっ、……っく、」
「……泣くな」
先生が頬を撫でて、指で涙を拭ってくれる。
優しいそれに、僕は、目を閉じる。
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