7
帰る頃には、夜になっていた。
田舎ゆえ、バスはもうなくなっていた。
携帯電話も、長く放っておいたせいか、充電が切れてしまっていた。
人、一人いない道。
満天の星が見下ろしてくる夜。
屋根付きのバス停で、ベンチに横になった。
明日の朝まで、バスを待とう。
目をつむって、虫の声を聞いて。
しばらくしたら、眠っていたらしい。
「陸っ!」
名前を呼ぶ声に、はっと目が覚めた。
目の前の道に止まった車のライトが眩しい。
運転席からおりてきたのは、
「せんせ……?」
「っんの、ばかっ……!」
痛いくらいに、抱き締められた。
「何黙っていなくなってんだ、俺がどんな気持ちで探したと思っ……、っ」
「ごめ、なさい、先生、ごめんなさい、」
肩が震えてる。
先生、泣いてるの?
「……先生、僕、見える」
「え……?」
「先生の顔、ちゃんと、見える」
先生が身体を離して、僕をじっと見つめた。
僕は、笑う。
「お兄ちゃんに、伝えたかった」
「っ……」
「僕は、幸せですって、」
先生と一緒に、生きていきたいって。
「……陸」
「……はい、」
先生は、泣きそうに、笑った。
「結婚しよっか」
僕たちの始まりと同じ。
とても軽い口調で。
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