6
side.譲
学校や寮、近くを探しても、陸の姿はなかった。
もう、日もくれかけていた。
あてもなくなって、俺はわずかな可能性にかけるように、陸の実家に電話をかけた。
『あら、譲くん……?』
「お久しぶりです」
律の友達として、俺と陸の母親とは顔見知りだった。
付き合っている事実は伏せつつも、陸の通う学校に働いていること、風邪で世話をしていたとき、陸がいなくなってしまったと伝えた。
『いなくなった……?』
「はい、申し訳ありません……私の不注意で……」
『昼頃、かしら、陸から電話が』
「え!?」
思わず大きな声を出してしまった。
『今度、帰ってくるって……今、幸せだって……』
「っ………」
今、幸せだと。
陸が、言ったのか。
『……あの子、律に会いに行ったんじゃないかしら』
「律、に」
『確信はないけれど……なんとなく、そんな気がするの』
あの子は、律にずっと、謝ってばかりだったから。
久しぶりに、幸せそうな声をしていたから。
報告をしに行ったんじゃないかしら。
『僕は、幸せです、って』
「っ………」
伝わったんだろうか。
俺を、認めてくれたんだろうか。
涙をこらえるように、唇を噛み締めた。
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