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記憶を辿って、そこへ行く。

電車を乗り継いで、街の面影もなくなった、田舎へ。
乗客の少ないバスに乗って、がたごとと揺られながら向かう。
昼過ぎにでて、もう、陽が落ちかけていた。

手には、花。
懐かしい、風景。

胸が痛むことは、なかった。



じゃり、と石を踏む。
静かなそこは、蝉の鳴き声が響いていて。
僕は、その場に座った。



「……お兄ちゃん」



無機質な、お墓。
そっと花を添えた。



「僕は、」



どうしてだろう。
笑っているのに、涙が出た。



「幸せだよ」



ねぇ、そこにいるの?



「お兄ちゃんは、喜んでくれる?」



お兄ちゃんの命を奪った僕。

何度も、謝った。
何度も、後悔した。
間違っていると思った。
どうして僕が生き残ったのか。

肯定された。
必要だと言われた。
愛されているとわかった。

生きていて、いいのだと。



「僕は、生きてて、いい?」



瞬間。
風が、僕の髪を揺らした。

夏の日。
僕は静かに、泣いた。
それは、今までと違う涙だった。



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