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side.譲
「せんせ、」
「ん、おはよ」
寝室からひょこ、と顔を出した陸のそばによって、抱き上げた。
そのままソファに座って、ぽんぽん、と細い背中を叩く。
「飯、食う?」
「………」
ふるふると、首を振られる。
「も、すこし、このまま……」
ん、と返事をして、ソファに横になった。
陸を腕の中に抱いたまま。
陸は安心したように、力を抜いた。
すっかり、弱々しくなってしまった。
前は多少なりしっかりした性格だったけれど、そんな影も見られない。
甘えたらいい、と思う。
真面目で、頑張り屋。
一人で色んなものを背負ってきたから。
「眠たい?」
「ん……」
目がとろんとし始めた陸の頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細める。
「寝ていいよ」
「ん……」
もぞもぞと、身動ぎする。
……可愛いな。
「あったかい……」
「ん」
もっと、俺にもたれかかればいい。
もっと、俺に甘えればいい。
どんなことがあっても、受け止めてあげるから。
もう、何もできないまま、大切な人を失うのはごめんだ。
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