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廊下から足音がする。
先生だ、と僕は玄関に向かう。
ドアが、ゆっくり開く。
「せ、っ……」
伸びてきたのは、手。
僕を捕まえようとするそれに、身体を捩って逃げる。
けれど、背を向けた瞬間に肩を掴まれてしまう。
「あっ!」
そのまま床に倒される。
視界は真っ暗になる。
目隠し?
僕の目は、どうしちゃったの。
「ひっ……」
服に手がかかる。
くすくす、と笑い声がする。
僕は嫌だった。
僕のせいなの?
『どうして、律がっ……』
どうして僕が、残ったの?
僕がいなかったら、
お兄ちゃんは、
僕がいなかったら、
先生は、
―――幸せだった。
「ごめ、なさ……」
僕が、幸せを奪った。
迷惑をかけた。
不幸にした。
何もかも、奪った。
本当に必要がないのは、僕。
「陸、」
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