3
side.譲
陸は、きっと知らない。
「………」
「………」
陸が眠るまで、俺は起きていることを。
「………ぅ、」
「………」
夢に魘されてか、眉間に皺を寄せていることを。
「……大丈夫」
俺がそっと抱き締めると、表情が少しだけ和らぐことを。
「……せ、……んせ」
俺を、呼んでくれることを。
色んなものを背負って、背負って。
一人になって、孤独を知って。
俺ならわかってやれると思った。
なのに、突き放した。
「………っ、」
陸は、知らない。
俺が陸を想って泣くことを。
「ごめん……ごめんな……」
傷つけて、一人にしたのは、俺。
目が見えなくなるまでに、陸を追い詰めたのも、俺。
表面では元気に見えても、心のうちに抱えてる闇。
それを、陸は見せようとしない。
「ごめんな……」
早く、治ればいい。
こんな苦しそうな顔じゃなく、安心しきった顔で、眠ればいい。
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