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side.譲



嘘だろ、と何度も思った。



「俺、雨宮にっ……」



乾から、すべて聞いた。

雨宮に何をしてきたか。
どうしてそんなことをしたのか。
乾の気持ちも、全部。



「て、めっ……!」



気付いたら、乾の胸ぐらを掴んでいた。
俺よりも喧嘩慣れしているであろう乾は、けれど抵抗一つせず、俺から顔を背けた。

その姿に、頭が冷える。
俺はあくまで教師で、生徒に手を出すことはできない。
それに……俺だって、



「……?」



黙って手をおろした俺に、殴らないのか、と言いたげな乾の表情。



「俺のために、か……」



馬鹿だなぁと思う。
雨宮を失うくらいなら、教師を辞めることも、厭わないのに。

雨宮は、言い出せずに、自分一人で抱え込んだ。
俺のために、傷ついた。
溢れ出た助けの声に、俺は気付いてやれず、突き放した。



「馬鹿は俺か……」



握った拳が、痛い。



「お前も俺も、馬鹿ってことだ」
「………」
「あいつには、もう近付くな。……友達としては、付き合って欲しいけどな」



乾は、普段は見せない年相応の顔をして、泣き出しそうになっていた。



「っ俺……雨宮のこと、好き、だった……多分、今も」
「………うん」
「でも、俺じゃ、駄目だ」



俺が言えた義理じゃないけど、と乾は続ける。



「雨宮のこと、っ」
「……わかってる」



失った分、大切にしてみせる。



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