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side.乾



止める間もなかった。



「なに、やって……!」



滴る赤に、背筋が凍った。
床にぺたりと座り込んだ雨宮は、ばたばたと暴れていて。



「やだ、っ……も、やっ、こわい……っ!」



泣きじゃくりながら、傷を増やそうとする。
無理矢理カッターを奪って、遠くへと押しやった。



「暴れんなっ、傷が、っ」



体格差からして、押さえ込むのは簡単だった。
暴れなくなった雨宮は、変わりに呼吸を荒立てる。



「っけほ……っは……けほけほっ」



独特の、苦しい呼吸。
パニックを起こしてしまっているようだった。

流れる血と、涙と。
苦しそうな呼吸と。

どうしていいかわからず、咄嗟に近くにあった雨宮の携帯を取った。
発信履歴にある、『先生』の文字。
それが誰かなんて、一瞬でわかった。



「ひぅ、っは、」



重ねられた、無数の傷跡。
随分と古いそれ。

先生が、気づいてないわけはない。



「せ、んせ……っ、」



俺は、発信ボタンを押した。



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