5
「え……?」
乾くん、いま、なんて、
「あんな、ひどいことして……信じられねぇかもだけど……」
好き、?
「……ずっと、お前のことみてた」
僕は、先生が好きで。
だから、嫌なことも耐えて。
嫌なことしてきた乾くんは。
僕のことが、好きで。
先生は、僕が、嫌いになって。
でも、僕は、
乾くんは、
「わか、ないっ……」
頭のなか、ぐちゃぐちゃで。
先生は行っちゃって。
乾くんはここにいて。
僕は、なにを求めてる?
わからない。
わからない。
わからない。
「雨宮、」
名前を呼ぶ声は、先生のものじゃない。
僕は、ひとり。
誰が呼ぶの?
また、いなくなるでしょう。
人殺しの僕は、
しあわせになんてなれない。
「っや、」
こわい。
一人は、こわい。
誰かにすがって。
裏切られるのもこわい。
どうしたらいい?
ぼくは、
「雨宮っ!」
気付いたら、ふらふらと立ち上がって。
左腕がじわじわと痛かった。
ぽた、と滴り落ちる、赤。
誰かが僕の右手を掴んだ。
血に濡れた、カッターナイフ。
「やあっ!はな、離してっ!」
どうしようもない。
僕は、生きる意味がない。
一人になるくらいなら。
怖い思いをしたくないから。
なにも、感じなくなればいい。
しんじゃえ、ば、いい。
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