3
side.乾
つるんでるやつらが今の俺をみたら、頭でも打ったかと大笑いするだろうと思う。
そこらじゃ名前の通った俺が、泣いてるやつを前に、おろおろしているなんて。
「ひぅ、う、うー……っ」
あーくそ、と染めて痛んだ髪をかいた。
泣かせることは得意でも、泣きやませることは、慣れてない。
泣きじゃくる雨宮の前に座って、じっと様子を見た。
握られた手は、未だそのままで。
「ごめん、泣き止めって」
「や、行っちゃう、みんな行っちゃうっ……」
「どこにも行かねぇから」
クラスの副委員で、リーダー格とは言わずとも影で委員長を支えているような、しっかりしたイメージしかなかった。
こんな弱弱しい雨宮を、見たことはなかった。
少しだけ躊躇って、震える小さな身体を抱きしめた。
ぽんぽん、と見よう見まねで背中をなでると、シャツを握りしめられる感覚がした。
「落ちつけ、な?俺はここにいるだろ」
「うそ、僕をおいて、どこかに行っちゃう……」
「行かねぇよ、ずっとここにいてやっから」
何かに、怯えているような。
「せん、っ……せんせ、も、行っちゃっ……」
「……先生って」
「きらわれっ、嫌われた、」
その理由が俺なんだろうと思うと、ずきんと心が痛んだ。
狙っていた状況なのに、思い通りにいったら、心が軋むように痛かった。
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