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がちゃりとドアが開いた音がして、俺は目を覚ました。
上半身を起こして目を擦っていると、羽鳥先輩の姿が見えた。
「起きてたんだ。具合はどう?」
「や、もう、大丈夫です……」
ゆるゆると、ベッドに腰掛けた羽鳥先輩が頭を撫でてくれた。
柔らかくて、あったかい空気。
「猫みたい」
「え」
「あんまり気持ちよさそうだから」
ふ、と先輩が笑う。
猫って。
撫でていた手が横に滑って、頬を撫でた。
片頬を撫でられて、しばし沈黙。
先輩の顔が、近くなる。
「やっ……」
顔を思い切り反らしてしまった。
「……俺じゃ、だめ?」
「え?」
「俺は遥を哀しませたり、傷つけたりしない。……今の、あいつみたいに」
「っ……」
ふいに、抱き締められた。
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