6
side.樹
「ちょっと待ってよ」
「っ………」
後ろから羽鳥に腕を引かれた。
その手を振り払って、俺は立ち止まった。
「放っておく気?ぼろぼろなあの子を」
「………先輩がそばにいたらいいんじゃないですか」
「はぁ?」
行こうとした俺を、また先輩が腕を掴んで引き止めた。
「本気で言ってる?それ」
「………」
「俺を痴話喧嘩に巻き込まないでくれる?これでも、振られた身なんだけど」
違和感。
え、ちょっと待て。
遥は羽鳥と、?
「謝るついでに改めて告白したけど、駄目だった。でも君が遥を切るっていうんなら、俺がもらうよ」
背中をポンと押されて、先輩は生徒会室に戻っていった。
俺は、立ち尽くしたままだった。
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