6
なんだよ。
なんなんだよ……!
いらつく。
でも、樹が発するどす黒いオーラが、俺を黙らせた。
何考えてんのか、わかんない。
幸せになれよって。
羽鳥先輩は言ってくれた。
俺だってなれると思った。
樹ならって思った。
でも、初めの出会いもそうだったけれど。
樹が何考えてんのか、全然わかんない。
俺、馬鹿だから。
頭いい樹の考えなんて、わかんない。
あ、泣く。
「っ……」
咄嗟にトイレに逃げ込んだ。
なんでかわからないけれど、見られたくなかった。
しゃがんで唇を噛み締めて、嗚咽をこらえた。
こん、と控えめにドアをたたかれた。
「な、にっ……」
「……吐いてる?」
「え?……や、吐いてない、けど」
「ならいい」
……ならいいって。
なんなんだよ。
トイレのドアの前に樹の気配はなかったけれど、俺はしばらく、出ていくことができなかった。
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