5
樹のマンションに着いた。
荒い息を整えて部屋の前までつくと、ドアの奥で物音がするのがわかった。
一瞬躊躇って、チャイムを押した。
「樹?いる、よね?」
無言。
物音もなくなった。
俺はなんかムカついてきて、ドアをどんどんと叩いた。
「聞いてんの、何で無視して、」
途端、がちゃりと鍵が開く音がした。
え?と驚いてゆっくりドアを開けると、背中を向けて奥に歩いていく樹が見えた。
空気が、ピリピリしてる。
なんか、怖い。
なるべく音をたてないように家にあがって、背中を追った。
樹はリビングのソファに座りながら、眼鏡をかけてノートパソコンを立ち上げていた。
時折、マグカップに口に付けていたり。
終始、無言。
俺はどうしていいかわからず、入り口で立ちすくむだけだった。
何、何か、怒ってる…?
「………座れば」
「うっ……うん、」
突然声をかけられて、びくびくしながら樹の隣に座った。
ふわんとソファが沈んだ。
「いつ、き?」
「………」
また、無言。
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