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放課後、いつも一緒に帰る俺たちだけれど、今日は樹が皆川先生に呼ばれた(樹はクラス委員長だ)。
仕方なく誰もいない教室で、机に突っ伏しながら待つ。



(……きれーだ)



グラウンドの向こうに見える、夕焼け。
ぼんやりとベランダの向こうを見ながら、あ、しあわせだなあ、とか感じながら。
初めてに近いゆるやかな空気を噛み締めていると、



「―――遥?」

「っ……!」



聞き覚えのある声。
がばっと身体を起こすと、想像通りの声の主―――羽鳥先輩が廊下から教室内を伺っていた。



「なっ……何、」
「そんな怯えないで。……これ以上は近づかないし、安心して」



羽鳥先輩はにこりと笑い、けれど俺は身体を固くしたまま、羽鳥先輩と対峙した。

羽鳥先輩。
昔の客、いわばお得意様。
そして、俺を襲った。
油断はできなかった。



「何か、用ですか」
「……ずっと、謝りたいと思ってて」



苦しそうな顔をして、羽鳥先輩が頭を下げた。



「なっ……」
「ほんと……あの時は手荒な真似してごめん。俺、どうにかしてた」
「先輩、」



初めて見る姿と、初めて聞く泣きそうな声に、俺は戸惑った。



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