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苛々した。
如月が何か悪いことしたわけじゃないし、むしろ介抱してくれたことにはお礼を言いたい。
でも、もうこれ以上、近付いて欲しくなかった。
どうせ、いなくなる。
だったら最初から、いなくたっていい。
一人にされるのは、もう御免だから。
「館林が出て行けっていうんなら、出て行くけど」
「………」
「でもお前、泣きそうな顔してる」
「泣きそうじゃな、」
言い掛けた声は、如月の肩口に吸い込んでいった。
ぎゅう、と抱き締められた。
「いやだっ……はなせ!」
「………」
「如月っ……」
「強がるな馬鹿。……見ないでやるから、泣け」
ぽんぽん、と諭されるように頭を優しく叩かれた。
(なんで、?)
なんで、わかるんだろう。
「……っう、ふ……っ」
「………」
「ひっ、……う」
何も、聞かなかった。
何も、言わなかった。
でも如月は黙って、俺を抱き締めていてくれた。
「……あの、ね、っ如月、」
「ん」
「俺……ハハオヤ、にっ……捨て、られた、」
言葉に出すと、胸が痛んだ。
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