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side.樹



くたりと意識を失った身体を抱えて、館林の家に向かった。
館林のポケットにあった鍵を使って、家に上がる。

中はやけにがらん、としていた。
一人暮らしと言っていたが、テーブルの上にある口紅のついた煙草や、普通は置かれるはずのないドレッサーが、それを否定した。
母親がいるのだろうか。



館林の服を脱がせて、濡れたからだを拭いてやった。
服の上からはわからない、身体の細さが際立った。

自分も服を乾かし、館林ベッドに寝かせた。
何か温かいものを、と冷蔵庫をあけたが何もなかった。
寝室で眠る館林を確認して、そっと外へでた。
確か近くに、コンビニがあったはずだ。



ふと、傘を差しながら思い出した。
館林の言葉。



『一人にしないで』



よくわからない。

誰から?いつから?
傍にいなかったから?



確かなのは、館林が何かに怯え、怖がり、哀しみ、泣いていたこと。

震えていた細い身体の感触が、まだ掌に残っていた。



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