6
side.樹
突然、手を握られた。
俯く館林の、耳が赤い。
「あの……さっ」
「……ん」
「俺、わかんない、けど」
一生懸命に、言葉を紡がれる。
「好きとか嫌いとか、よく、わかんない、けど」
「……ん」
「如月には……感謝、してる。色々、助けられた、し……」
震えているのは、緊張からか。
「俺っ……如月のこと、好き、だし……でもそれは、違うのかなって」
「は?」
「好き、だけど……よく、わかんな、くて」
ちらりと、表情を伺われる。
顔、真っ赤。
「付き合うとか、よく、わかんない。如月を好き、なのが……どの、好きなのか」
「……うん」
「でも……如月の、そ、傍に、いたい……」
「っ……」
こいつ、鈍すぎじゃないか?
傍にいたい、って。
告白も同然じゃねえか。
それでもはっきりと、自分の感情を表せないのは。
今までの館林の生き方が、あまりに寂しかったからか。
「それでも、いいなら……またあの家に、」
帰っても、いい?
不安そうな目をして、懇願された。
「……何言ってんだ」
「っ………」
哀しそうに、顔が歪んだ。
きっと誤解してる。
『うちに来るなんて何言ってんだ』と。
そんな顔、させたいわけじゃない。
構わず、抱き込んだ。
「……当たり前、だろ」
「きさ、らぎ」
「……不安そうな顔するな」
俺にとっては、また生殺しな日々が続くけれど。
そばに、いてくれるならば。
それでも、いい。
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