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……とか思ってた矢先。
「お前やっぱ馬鹿だろ」
「うー……」
「普通、授業始まる前に怪我するか?」
張り切ってグラウンドに出た瞬間。
わずかな段差に気付かず、見事なスライディング。
右膝に怪我を負った俺は、如月に引きずられるようにして即退場した。
……馬鹿だ。
「いっ……痛い、如月!」
「我慢しろ」
保健医の満月先生が外出中で、如月が俺の右膝に治療を施している。
「こんくらいで泣くな」
「泣いてないっ」
「素直じゃないやつ」
たしかに傷に染みて、う、と視界がぼやけたけど。
「あの時は可愛かったのに」
沈黙。
「……今、なんて」
「泣き顔、可愛かったのに」
あくまで如月は無表情。
てきぱきと消毒を終えて、絆創膏を貼ってくれている。
「なっ……何、言って」
「覚えてないのか?」
「覚えてっ……る、けど」
忘れるわけがない。
屋上のときのだ。
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