5
side.樹
館林は気を失ってしまった。
額にかかる髪を払って、頬に流れる涙を拭った。
この涙は館林のか―――俺のなのか。
「………っくそ、」
もどかしくて、拳を握った。
俺に、何ができる?
館林が拒食気味なのはわかっていた。
死にたがり、だということも。
わかっていて、理解して。
危なっかしいから、傍にいたくて。
大切だから、放っておけなくて。
俺の存在が館林の何なのか、それはわからない。
だけど少しでも―――居場所になれればと、思っていた。
「………ごめん、な」
少し赤くなった首を、そっと撫でた。
二度と言わせたくない。
死にたい、だなんて。
殺せ、だなんて。
(………死なせてたまるか、)
静かに、誓って。
深く眠る館林の額に、優しく、キスを落とした。
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