6
side.樹
胸騒ぎがした。
館林の様子がおかしいと思った。
目を、反らすから。
放課後、ふらりと消えた館林を探した。
屋上に、それはいた。
ドアを開けた瞬間に、涙を浮かべた館林が、懇願するような目をしてこちらを見ていた。
微かに動いた口が紡いだ言葉は、聞こえなかったけれど。
確かに、俺の名前を呼んだ。
頭に血が昇った。
体裁も何も考えていなかった。
ただひたすらに、あの男が許せなかった。
館林にあんな表情をさせたことに。
館林に―――あんなことをしたことに。
館林が売りをしているのは、もちろん知っていた。
だからそれを利用して、近付いた。
いざ見てみると、駄目だった。
自分が好きなやつが他のやつに抱かれてると思うと、もどかしくなった。
だからといって、あいつらと同じにはなりたくなくて、館林を抱くことは出来なかった。
――どうにか、なりそうだった。
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