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「……な、んで……」
「………」
くるりと振り向いた如月は、未だ無表情なままだった。
ただ俺と目が合うと、くしゃりと、苦しそうに顔を歪ませた。
そのまま座りこんでいる俺の前までやってきて、そっと、抱き締められた。
「きさらぎ……?」
「……ごめん」
「え、何……何で如月が」
「ごめん」
如月は謝るだけで、俺を更に強く抱き締めた。
「怖かった、よな」
「っ……全然、俺、こんなの慣れて、」
「震えてる」
言われるまで気付かなかった。
自分が小刻みに震えてるのがわかった。
それが羽鳥先輩からの仕打ちが怖かったからなのか―――如月と離れなければいけないと気付いたからなのかは、俺にも判別できなかった。
「よ、用事、は」
「嘘。お前の様子がおかしかったから、胸騒ぎがした」
そういいながら如月は身体を離し、無様な姿になった俺を一瞥すると、また冷めた表情をして頬を強張らせた。
「……どこ?」
「え?」
「どこ、触られた?」
「え、ちょっ……あ、っ……」
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