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「き、さらぎ……?」
「………」
完全に頭が混乱した。
突然、屋上のドアが開いた。
如月だった。
整った顔に無表情を貼りつけたそれは、あまりに凄絶で。
俺の背後に立つ羽鳥先輩を引き剥がして、殴った。
如月は倒れた羽鳥先輩に馬乗りになり、尚も殴ろうとした。
「ちょっ……きさらぎっ、もういいからっ……!」
「っ……」
振り上げた右腕を必死で止めると、如月はゆっくりとそれをおろし、羽鳥先輩の胸ぐらを掴んだ。
「……てめえ、何してんだ」
ぞっとするほど、冷えた声だった。
後ろにいる俺は表情こそ見えなかったものの、その声はまるで、別人のようで。
「ちょ、待てよ。こっちは同意でやってんだ、邪魔すんな」
「同意?同意でんなことやってるやつが何で、んな顔してんだよ」
「っ……」
如月は羽鳥先輩を屋上から追い出すように、入り口まで引っ張りだした。
「二度とこいつに近づくな」
そう一言だけ言って、乱暴にドアを閉めた。
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