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迂闊だった、と自分の行動に舌打ちした。
その間にも羽鳥先輩は手を止めてはくれなかった。
羽鳥先輩が本気だったとも思っていなかった。
本気の人間は、何をしでかすかわからないのだ。
抱かれる分には別にいい。
ただ無理矢理にされることは、嫌だった。
「せ、んぱ……っあ!」
「許さないよ」
「ごめっ……なさ、」
「聞かない」
容赦ない仕打ち。
自身をゆるゆると握り動かされ、意思に反してそれは反応し始めていた。
ああ、なんて、と。
抵抗する気もなくなった。
このまま憎しみにまかせて、俺を刺せばいいのにと。
助けなんて求めていない。
助からなくてもいい。
滅茶苦茶にすればいい。
ただ――会いたかった。
「き、さ……ぎ……っ」
家で甘めのコーヒーいれてもらって。
勉強教えてもらって。
一緒にご飯食べて。
眠くなったら寝て。
寝る瞬間に見える、あの如月の目が、見たくて。
「如月……っ!」
(……会い、たいよ)
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