5
「……携帯鳴ってる?」
「あ、俺のだ。ごめん」
数学を教えてもらってる途中で、俺の携帯が鳴った。
ディスプレイには『着信:羽鳥』の文字。
「出ないのか?」
「んー……ちょっとごめん」
ベランダに出て、電話をとった。
「もしもし?」
『遥?ごめん、今忙しかった?』
「いや、大丈夫です」
電話なんて珍しい。
いつも羽鳥先輩はメールだったから。
「どうしたんですか?」
『ごめん、しつこいかもしれないけど……』
「?」
『今から、会えない?』
沈黙。
たしかに、ちょっとしつこいかもしれない。
ここのところ毎日、誘いのメールがきていた。
前へ top 次へ