3
side.樹
「じゃあ……なんで?」
館林が動揺しているのがわかる。
どうしていいのかわからないのだろう。
「ここに毎日来るだけでいい。それが契約だ」
「……はぁ?」
俺だって男だ。
館林が―――好きなやつが目の前で無防備で寝てたら、抱きたくて仕方なくなる。
でも。
身体目当てじゃない。
欲望をぶつけたいわけじゃない。
そばにいてくれれば、それでよかった。
館林にとって俺がただの「客」なら。
一度抱いてしまったら、それは固定されるんだろう?
――なんて、言えずに。
「嫌なら、出て行ってもいい。そもそも俺が無理矢理頼んでるわけだし」
「別に嫌とかじゃ」
「だったら……ここにいろ」
愛おしい、この子。
無意識に、手が伸びていた。
少し赤く蒸気した頬に触れると、恥ずかしそうに目を背けられた。
長い睫毛が、微かに震えている。
ただ、その存在が、愛おしかった。
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