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「今日、駄目?」
「……あー、羽鳥先輩」
学校から帰ろうとしていたら、廊下でつかまった。
長く付き合いのある常連客だ。
同じ学校の3年で、俺が名前を知ってるくらい、有名な人だ。
それくらい、羽鳥先輩は顔が整っていて、俺も時たまどきどきする。
「すいません、先約が」
「そっか。昨日も放課後忙しそうにすぐ帰ったもんね。新しい客でも入った?」
「そういうわけじゃ……」
客、なんだろうけど。
全くそんなことしてない。
「じゃ、また今度」
「……はい」
人目が少ないのを良いことに、羽鳥先輩は俺の額に軽く口付けた。
ひらひらと手を振って、去っていく。
(……ったく、あの人は)
何考えてるか、よくわからない。
「……館林?」
突然かけられた羽鳥先輩とは違う声に、心臓が跳ねた。
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