10
 

「……あいしてる、」



耳元で、それははっきりと聞こえた。

涙が出た。



「樹、いつきー……っ」
「……泣くな」
「ふぇ、っ……う、」



もう、終わったと思った。
こんな幸せ、もうないと思った。




明日なんてどうでもよかった。
未来なんてこなくていいと思ってた。

ただ快楽を求めて、身体を売った。
母親にも、捨てられた。

ぼろぼろになった。
生きる意味も気力もなかった。



樹だけは、違った。

ずっと傍にいてくれた。
死にたがりの俺を、死なせないように。
ずっとずっと、傍にいてくれた。



「樹っ、好き……っ」
「……あいしてる。ずっと」



優しい手は、俺に向けられてる。
離さないように、無くさないように、その手を俺は握り締める。
握り返してくれる力が、そこにはあるから。



きっと、これからも、ずっと。







END.



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