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俺を抱き締める樹の身体が、震えているのがわかった。
「俺は……駄目なんだ」
「え?」
震えている、声。
樹が何かを必死に、伝えようとしてる。
「遥と……別れた時、何も手につかなくなった」
「え……」
「どうしようもなくて、会いたくて、家に行って……倒れてるの、見つけた」
あの日のことだ。
俺はもう不安定だったから、あまり覚えていない。
「遥の身体が、冷たくて……もしかして、って思って、俺……っ」
「樹、」
「俺、駄目なんだ。遥がいないと……俺は」
心臓が、破裂するかと思った。
頭に添えられた手とか、
身体の温もりとか、
近い匂いだとか、
もう、いっぱいいっぱいで。
「そばにいていい、とか……
俺が、そばにいたい……」
胸が、ぎゅうっとなる。
「樹、樹っ……」
「ん」
「好き、っ……好き、」
俺も樹を抱き締めた。
苦しくて、痛くて、でも、全然足りない。
近くにいるのに、もっと近くにいたくて。
「足りない……っ」
「っ……可愛いこと言うな」
やっと重なった、唇。
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